2ちゃんねる管理人の西村博之氏とWeb2.0の提唱者Tim O'Reilly氏が、「VentureBeat」イベントで初めて顔を合わせた夜、会場に集まった経営者やベンチャーキャピタリストから、西村氏に多くの質問が寄せられた。話題はニコニコ動画の誕生秘話から収益化の目論見、注目の裁判問題、そして西村氏のライフスタイルにも及んだ。ナビゲーターは三菱UFJキャピタルの渡辺洋行氏が務めた。
渡辺洋行氏:
どのような経緯でニコニコ動画を始めたんですか。
西村博之氏:
あれはもともと動画にコメント入れたらおもしろいんじゃね?ってのがあって。あ、それおもしろいかもって思って作っただけで、別に深い思い入れとかないんですよ。
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もうちょっと話を引っ張ると、もともと2ちゃんねるで実況板っていう、テレビを見ながらみんなで実況する掲示板っていうのがあったんですけど、それがわりと活況で。
テレビってやっぱり見てて自分も何らかの感情を持つことが多いんですけど、その感情をどうやって伝えるかというと、一人で見てたら伝える相手はいない。それが2ちゃんねるの掲示板に行ってたっていうのがあった。
何か映像を見ながら表現するっていうのはわりと需要があるんじゃないかなって前から思ってて。アテネオリンピックのときに、知り合いがハードディスクレコーダーを作ってまして、そのときにネットワークにつないでユーザーがコメント投稿できるようにすればいいんじゃね?って話をしてたんですけど、その会社がちょっと鳴かず飛ばずで…まあ名前は言えないんですけどね(笑)。
で、そのまま何年も経って、去年の冬くらいにドワンゴの人からこういうのを思いついたんだけど、どう?って言われて、あーこれ昔おいらが考えたやつに似てるって話をしてて、じゃあおもしろそうだからやってみようかって話になった。メンツを決めようってときに、開発者1人と新卒の女の子1人と僕と最初に言い出した人の4人で居酒屋で集まった。そこで「じゃあ作ろうかー」って話して作ったのが始まりです。
渡辺洋行氏:
ニワンゴに対するコミット度でいえば、どんな感じで関わっているんですか。
西村博之氏:
コミット度…、僕はたぶん週に3日以上働いてないんで、そういう意味ではコミット度は30%~40%くらい。一生懸命ってことになってますよ、表向きは(笑)。
渡辺洋行氏:
いま仕事の中身は、2ちゃんねるの部分とニワンゴの部分で分けてるんですか。
西村氏:
あとは未来検索ブラジルっていう検索エンジン会社をやってまして、たぶん技術者じゃないと知らないと思うんですけど。ちょっと細かい技術的な話になるんですけど、データベースってあるじゃないですか、MySQLとかPostgreSQLとか。あれって欧米人が作ってるんで、日本語の検索ができないんですよ。厳密にいうとできるんですけど、ものすごく遅いんです。もともと日本語が検索できるように作られてないからなんですけど、それが日本語でも全文検索できるようにするっていうエンジンを未来検索ブラジルっていう会社で作っていて、それを細々と売ってたりします。
中村壮秀氏(アライドアーキテクツ株式会社 代表取締役):
ひろゆきさんの子供のころの夢は何でしたか。
西村博之氏:
ぺんぎんの飼育係です(笑)。
津幡靖久氏(フィードパス株式会社 代表取締役社長 CEO):
その才能を国のために、日本の産業のために役立てようとかお考えになったりしないんですか。発想とか着眼点がすごく素晴らしいので、自分が楽しいだけじゃなくて、もうちょっと何か役に立っていただけないかなぁと思うのですが。
西村博之氏:
でも、けっこうな額の税金払ってると思いますよ、僕(笑)。
渡辺洋行氏:
裁判に出ないのはどういう理由なんですか。
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西村博之氏:
毎日のように裁判って起きるんですよ、東京以外でも。いまはもう出てないので何件あるかわからないですけど。一時期、まっとうに出ていたことがあって、そのときトリプルヘッダーとかあったんですよ、東京地裁だけで1日3回(笑)。
それが地方でも起きてたりするので、そもそも無理なんじゃね?ってのがあって、出ないでいました。出ないでいるとどうなるかっていうと判決が出て負けるんですけどね。で、敗訴が確定して、相手の言い分が完全に通るんですよ。
例えば、損害賠償400万円欲しいって人だったら、僕が400万円払わなければならないっていう判決とか命令が出るんです。
で、それも放置したらどうなるかっていうのをやってみたら、別に何も起きないんですよね。結局、判決が400万円だとすると、僕から400万円を取る権利が確定するんですけど、権利が確定しただけで、その取り立ては国はやってくれないんですね。じゃあ僕が仮に400万円持っているとします。どうやってお金をとるか? 会社員だったら会社に対して給料差し押さえとかできるんですよ。じゃあ会社員じゃなかったらどうやってお金とるんですか?ってどんな弁護士に言っても答えがないんですよね。こういうことがあって、あ、デメリットないじゃんと(笑)。
場当たり的な理由なんですけど、インターネット上の名誉棄損に関しては裁判をどこでも起こしていいっていうルールなんですよね。僕が例えば東京で会社やって、モノを売ってるとします。それで訴えられたら、モノを売ってる場所じゃないきゃ裁判は起こせないんですけど、インターネット上の名誉棄損は沖縄でも札幌でも起こせてる状態なので、そもそも裁判にまじめに対応しようってことが不可能なんですよね。ということで、法律がたぶんいずれは変わるだろうと僕は思ってるんですけど。
星正道氏(日本経済新聞社):
裁判問題を解決していただかないと、日経新聞でひろゆきさんをご紹介できないんです(笑)。ご意見頂戴したいのは山々なんですけれども…。
西村博之氏:
日経でも訴えられてない会社の方が少ないと思いますよ。楽天がプロ野球チーム買うときに、「うちは訴えられてません」って言ってたんですけど、僕の知り合いの弁護士が訴えてましたからね。そういう意味でミクシィも訴えられてますし、そもそもネットって訴えられるものだと思いますよ。
渡辺洋行氏:
今日、ミクシィの人来てますから…。
西村博之氏:
あ、すいません(笑)。
井上大輔氏(株式会社メタキャスト 代表取締役兼CEO):
ニコンドライフっていう楽しげな世界があるって聞いたんですが、これはどういうものなんでしょうか。
西村博之氏:
先日、ニコニコ動画の発表会でネタをとるために、ニコンドライフって言ったら笑いをとれるかなって考えたんですけど、思いのほかキーワードだけが発展していってしまって。まるで中身のないことなので、あまり聞かれても困るんですよね。「Web 2.0」と同じような単語だと思ってください(笑)。
西條晋一氏(サイバーエージェント 専務取締役):
サイバーエージェントの西条と申します。ドワンゴさんと非常に仲が良いように見られるんですけど、サイバーエージェントグループなんかも今後いろいろご提案させていただいてもよろしいでしょうか。
西村博之氏:
ありがとうございます。よろしくお願いします。(アメブロでのブログ執筆については)ブログサービスっぽいのを自分で立ち上げちゃって細々とやりたいので、何なら買ってください(笑)
渡辺洋行氏:
さきほど、週3でお仕事と仰ってましたが、残りの週4日の生活について教えていただけますか。
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西村博之氏:
実は週3もウソなんですけどね(笑)。最近ちょっと風邪をひいていてずっと家にいまして、今日はドワンゴの会議があったんですけど、これ(VentureBaetイベント)があったんで飛ばしたりして。わりと最近はPSPのディスガイアっていうゲームをやって、飽きるとPS3のブレイドストームっていうゲームをやって、飽きるとCATVで録画したスターチャンネルを見て、飽きると本を読むっていうのがわりとループしてる感じですね、最近は(笑)
西田隆一(CNET):
まず2つ質問あるんですけど、1つは先ほど訴訟のお話がありましたけど、たぶん個人的な財産はすべて差し押さえられてるんじゃないかと思うんですが、どういうふうに生活されてるんですか。
西村博之氏:
昔の人の言った言葉で、木の葉を隠すには森に隠せっていうのがあって、僕が持ってる銀行口座の数は自分でも数え切れないんですよ。例えば差し押さえをするときは、銀行名と支店名を指定しなければいけないんです。で、それを一件一件やるから、差し押さえするためにもお金がかかるわけです。というわけで僕の銀行口座を全部探すにはものすごいお金がかかるんですよ。その宝探しをやる人がまだいないっていうのが現状です。
西田隆一:
それからちょっと真面目な質問を。いまたくさん動画サービスを始めている会社があり、そのなかでもニコニコ動画は人気ですが、これをどうやってマネタイズしていこうと考えているんですか。
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西村博之氏:
そういう意味では株価が上がってるんで、株主はマネタイズできちゃったんじゃないですかね、っていうと微妙なんで申し訳ないんですけど(笑)。
一応細々と黒字になればいいと僕は思っていて、いま会員数が400万人いて、有料会員が14万5000人くらい。月500円の会員なので月額でいうとだいたい7000万円くらい払ってくれる有料会員がいます。
ただ、ネットワークのコストがいま月に6000万円から7000万円くらいかかっています。仮に無料ユーザーを全部閉め切って有料ユーザーだけにすると、ネットワークのコストも下がって、黒字化は可能なんですよ。
という意味で本当にやばくなったら黒字化はできる状態なんですけど、ただ親会社がお金を持ってるんでどんどん借りてじゃぶじゃぶ使っちゃえって楽しくやらせていただいてます(笑)。
経営者たちがひろゆきを質問攻め、「その才能を国のために…」:インタビュー - CNET Japan