被差別部落出身の人々が創立した全国水平社。1922年の結成から100年が経過した。抑圧されてきた当事者の立場から、平等で尊厳ある社会を求めて粘り強く活動をしてきたが、忘れてはならない「負の歴史」がある。戦争に協力したことだ。 日本は第二次大戦まで徴兵制。集団生活で蔑視が顕在化しやすかった。旧日本軍の軍隊内での差別問題への対応は、水平社設立当初からの主要課題の一つとなっていた。出身者は「なぜ仲間に差別されねばならないのか」と憤り、嘆いた。差別のひどさは「原爆の被害より鮮明に思い出す」と吐露する被爆者もいたほどだ。 水平社は日中戦争開戦後、戦争に協力することによって差別解消を目指す道へ進んだ。人権や平等を求めつつ、国家総動員体制の下、他国への侵略を肯定した形だ。しかし、軍隊内や銃後の生活での偏見・差別はなくならず、重い教訓として残った。(共同通信=安祐輔、角南圭祐、小島佳祐) ▽「一番の人権侵